大判例

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東京高等裁判所 昭和42年(う)875号 判決 1967年8月29日

本店所在地

神奈川県高座郡寒川町倉見三、六七五番地

相模興業株式会社

右代表者代表取締役

野崎清治

本籍

神奈川県津久井郡藤野町牧野二、八五八番地

住居

同県茅ケ崎市中海岸三丁目五番一〇号

相模興業株式会社専務取締役

加藤一郎

昭和七年三月一三日生

右両名に対する法人税法違反各被告事件について、昭和四二年一月一一日横浜地方裁判所が言い渡した判決に対し、各被告人およびその原審弁護人から控訴の申立があつたので、当裁判所は、つぎのとおり判決する。

主文

原判決を破棄する。

被告人加藤一郎を懲役六月に、被告人相模興業株式会社を罰金三、〇〇〇万円にそれぞれ処する。

ただし、被告人加藤一郎に対し、この裁判の確定した日から二年間右刑の執行を猶予する。

理由

本件控訴の趣意は、被告人両名の弁護人寺坂吉郎提出の控訴趣意書の記載のとおり(量刑不当の主張)であるから、これを引用する。

原判示の事実によると、被告会社の昭和三七・三八年の両事業年度における実際所得額は、合計五億九、八三一万余円であるのに、その申告所得額は、実際所得の四割三分強にあたる合計二億六、〇二二万余円であつて、その法人税逋脱額は、合計一億二、八四七万余円に達するところ、原判決は、被告会社の専務取締役として本件各犯行を敢行した被告人加藤を懲役一〇月、二年間の執行猶予に、被告会社を罰金四、五〇〇万円にそれぞれ処していることが明らかである。ところで、原審記録を調査し、かつ、当審における事実の取調の結果を勘案し、考慮すると、被告人加藤の経歴、性行、本件各犯行の態様、犯行後の情状等に、被告会社の業績等諸般の事情を考慮し、ことに、被告人加藤は、被告会社の専務取締役として同会社の業務全般を統轄しているうちに、同会社の主要目的である砂利の採取、生産、販売等の事業における砂利の採取が、従来河川を中心としていたのに、河川保護等の観点から漸次河川での採取が制限される形勢下にあつたため、陸掘り等への転換資金を蓄積しておく必要にせまられたことが主たる動機となつて、本件犯行を犯すにいたつたものであるが、その後、その非を悔い、本件公訴提起前の昭和三九年一〇月三一日に原判示二の確定申告の所得額に四、〇一五万余円を追加所得として修正申告をし、それに対する法人税を納付したうえ、その余の本件逋脱額およびそれに対する加算税、関係公租公課等も納付していること、被告人加藤は、すなおに本件各犯行を認めて反省悔悟の情が顕著であることなどの諸事情を勘案すると、原判決の被告人両名に対する右量刑は、やや重きに失するものがあると認められるのであつて、論旨は、いずれも、理由がある。

よつて、本件各控訴は、理由があるから、刑事訴訟法第三九七条第一項、第三八一条により、原判決を破棄し、同法第四〇〇条但書に従い、直ちに当裁判所において自判することとし、原判決が、証拠により確定した被告人両名の犯罪事実に、そのかかげる相当法条を適用し、被告人加藤については懲役刑を選択して、原判示のように併合罪の加重をした刑の範囲内において、被告人加藤を懲役六月に、被告会社を罰金三、〇〇〇万円にそれぞれ処し、なお、被告人加藤に対しては、刑法第二五条第一項を適用して、この裁判の確定した日から二年間右刑の執行を猶予することとして、主文のとおり判決する。

検事 塚谷悟 公判出席

(裁判長判事 堀義次 判事 内田武文 判事 金子仙太郎)

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